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ここはのどかな田舎町、”播野(はりの)”。
子供の数も少なく住人ともに老化していくこの町は、
ある一族が土地の主となり治めていた。
その一族の名は”八鳥(はっとり)”。
財力のあるこの一族がこの土地へとやってきたのはここ数年の話だ。
町の発展もまだまだだが、期待できるだろうと町のご隠居共は言う。
そんな村に一族の娘、
つまり跡取り候補として共に移り住んできたのが私、”八鳥深雪(はっとりみゆき)”だ。
男系の一家だった八鳥家に生まれた私は蝶よ花よと育てられたが、父だけは違った。
毎晩お酒を浴びるように飲み、気に入らないことがあればすぐに憤怒し暴れた。
私には少し甘い一面もあったかもしれない。
私は父に褒められるために学力も優秀であることを保ち、武道会では全国一位を飾った。
それでも褒められたことは一度としてなかった。
付き人の”長瀬晴巳(ながせはるき)”は自分と同い年の私にいつも、
「深雪が凄いこと俺は知ってる」と励ましてくれた。
それだけが唯一頑張ろうと思える瞬間だった。
そんなある日私はこっそりと家から抜け出すことを計画した。
少し父に反抗したいという思いが芽生えたことによる出来心だった。
時間帯は夜中のみんなが寝静まった頃だ。完璧な計画だと思っていた。
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