海の上の月

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私は泣き出しそうだった。 指を開いて空を眺めると、空の月も再び顔を出した。 「じゃあな、明日学校でな」 「……ありがとう。えっと、た、高橋」 「オースケでいいよ」 「う、うん。明日ね」 ものすごく安い女かもしれない。 嬉しかった。 そして、恋に落ちていた。 自覚するほどに、ハッキリと恋に落ちていた。 「明日……」 オースケはそこまで言って少し考えて耳を赤く染めながら言った。 「明日、昼メシ一緒に食わねえ?」 「えっ!」 「授業終わったら、教室迎えに行くわ」 「……うん」 顔から火が出るほど熱かった。 オースケはカクカクとした動作で歩き出した。 「あっ! お、おやすみ!」 「……」 体ごとこちらに向くとフニャリと笑って、手を大きく振った。 「おやすみ!」 捕まえた小さな月をぎゅっと握って、オースケが角を曲がるまで見送ると、そのガラスを空にかざして丸い月と重ねる。 キラキラと光ってとても綺麗だった。 私は少しだけ口角をあげて背筋をピンと伸ばす。 おやすみ、今日のお月様。 おやすみ。また、明日。 おわり
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