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「なんだよ、泣いてんなよ」
「わ、私の事よく知らないのに、なんでこんなに優しくしてくれるの?」
「……知ってるとかそういうのじゃねえじゃん。なんつーか、俺がなんとなく……ほっといて帰れなかっただけだから」
「……」
ぐすっと鼻をすすってオースケを見上げたまま立ち止まると、私の手の中から缶をとって開けた。
「腹が冷てえると、いいこと考えられねーし、糖分足りねえと脳味噌働かねーだろ、早く飲め」
唇を寄せるとじわんと温かく甘い液体が体の中心に流れた。
「……美味しい」
「だろ?」
「うん」
嬉しそうに笑ったオースケは自動販売機の横のゴミ箱を見つけると、ぽんっと投げた。
きゅっと手首がしなって投げ出された缶は綺麗な放物線を描いてゴミ箱に入って、カラカランと音を響かせた。
「……」
「やった、入った」
「バスケ部だもんね」
「あはは! バスケ部関係ねえよ」
オースケはそう言いながら、手首をキュッキュッとシュートするように何度も曲げてみせた。
「どんなに練習して、どんなに頑張っても……結果がでない事ってあるだろ。結果がでるから、やるんじゃねえんだよな。でなくても、ついてこなくてもやるんだよな」
オースケはさっきまでとは違う真剣な眼差しで言った。
「恋愛とか……よくわからねえし、偉そうなこと言えねえけど……バスケとかと同じじゃね?」
「……」
「結果がでるから、好きになったりするわけじゃねえだろ?」
「……そうだね」
家までもうあと少しだった。
もっと家が遠ければいいのにと思う自分がいた。
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