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 父さんの身体が湯船の中に沈むのに合わせ、入れ替わりにお湯の表面がせり上がり、静かに縁から溢れ出していく。  よいしょ、と腰を落ち着け、先に浸かっていた俺の顔を見た父さんはクスリと笑った。 「――凹んでるな。久々に母さんに絞られたからな」 「……」  俺は尖らせた口元をお湯に浸け、ぶくぶく、と泡を吐いた。  夕食後、母さんは俺を食卓に座らせ、アレルギーの恐ろしさについて、そして子供が親に隠し事をすることの危険性について、延々と語った。  いわゆる典型的なお説教というやつだ。  やっと解放された時には八時を過ぎていて、観たかったテレビ番組はとっくに終わってしまっていた。 「……だから、言いたくなかったんだ」  素手で水鉄砲を作り、きゅっと握ると、前方に飛ぶはずだったお湯が自分の顔に命中した。
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