167人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも、母さんもお前以上に落ち込んでたよ」
「え……なんで」
戸惑って顔を上げた俺に、父さんは優しい目で笑いかけた。
「普段から口うるさくしすぎたせいで、拓己がわたしに大事なことを話してくれなくなっちゃったって。しょんぼりしてた」
「……」
「まあ、……これは親としての永遠のテーマなんだろうけどな。
『言ったら怒られるから言わない』っていうのは、子供の当然の心理だと思うし。
――ただ……。
拓己はしっかりしすぎてて、無理してでも自分一人で何とかしようとするところがあるから。
そこは父さんも少し心配かな」
「……」
「あんまり急いで大きくなろうとするなよ。
みんないつか、嫌でも大人になっちゃうんだからさ。
背伸びせずに、今のうちに遠慮せず甘えとけよ」
父さんの手が、濡れた俺の髪をくしゃっと撫でる。
何だか照れ臭くて、俺は何も答えずに黙って水鉄砲を連射した。
最初のコメントを投稿しよう!