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「た、高い……」
下を見てしまったのか、亜優が震える声で呟き、動きを止めた。
「やめとく?ホントに怖いなら、無理しない方がいいよ」
「……」
俺の顔を見てしばらく葛藤してから、亜優は首を横に振った。
「がんばる」
きりっと表情を引き締めて顔を上げ、ゆっくりと足を進める。
「大丈夫。上、見て。次に掴む棒のことだけ考えて」
一番上の段まで到達したところで、俺が先に上に上がり、亜優に手を差し出す。
「あともう少し。がんばれ」
亜優は真剣な表情でこくりと頷き、俺の手を取った。
ぐっと引き上げたその重みの分だけ信頼されている気がして、誇らしいようなくすぐったいような、不思議な気持ちになった。
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