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「拓己、ありがとう」
「なにが」
「拓己が隣についていてくれたから登れたんだもん。ひとりだったら絶対に無理だった」
「いや、俺は別に。がんばって登ったのは亜優だろ」
「そうだけど、……でも」
亜優は少し照れたように首をかしげ、
「拓己が大丈夫って言ったら、ほんとに大丈夫な気がして。
―だから、やっぱりありがとう」
「……」
俺は素っ気なく「別にいいよ」とだけ返し、顔を逸らした。
目を合わせていたら、自分の心の内側がこの茜色に透け、亜優に丸見えになってしまうような気がしたから。
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