終章

10/14
前へ
/20ページ
次へ
「拓己、ありがとう」 「なにが」 「拓己が隣についていてくれたから登れたんだもん。ひとりだったら絶対に無理だった」 「いや、俺は別に。がんばって登ったのは亜優だろ」 「そうだけど、……でも」  亜優は少し照れたように首をかしげ、 「拓己が大丈夫って言ったら、ほんとに大丈夫な気がして。 ―だから、やっぱりありがとう」 「……」  俺は素っ気なく「別にいいよ」とだけ返し、顔を逸らした。  目を合わせていたら、自分の心の内側がこの茜色に透け、亜優に丸見えになってしまうような気がしたから。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

321人が本棚に入れています
本棚に追加