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第一話
平安の昔
都が京にあった頃の話
五人の侍たちが 三吉山の麓
名もない森へと進んでいきます。
彼らは 都を荒らし回った盗賊団一味を 探索にやってきた 侍たちです。 五人の殿(しんがり)を勤める 若武者
猛禽類を思わせる 鷲鼻に 鋭い眼光
若き日の 源 雷禅 その人です。まだ 八の字の髭をはやしていません。
他の侍たちは
盗賊団を退治してやろう!とか捕縛してやろう!という意気込みが あまり感じられず
何やら 若き日の 雷禅 一人 気を馳せております。
三吉山への 野道 を進むうちに
雑然とした 木々が現れて
いよいよ 他の侍たち「なんでわしらだけ、こんな寂しい辺鄙なとこ来なきゃならんのだ」と ついには 口に出す始末。
率いた大将の侍さえ「早く盗賊をみつけ都へ戻ろう」と励ましています。
その時
森の奥から ぎゃーっ~!と
人のものとは思えぬ 叫び声がこだまして みな 戸惑っているうち
いち早く飛び出した 雷禅 飛び込んだ
森の中の惨状に 唖然と しました。なんと 彼らが追っていた 盗賊の九名が
みな 血みどろの死体となって転がっていました。
しかも首筋を 巨大な獣に噛み裂かれ一撃で 倒されております。
侍大将 近づき 一体の死体を
見て「こやつ、盗賊の頭じゃ、この首を切り、都へ帰るぞ」と手下の侍に命じました。
「大将、しかしこやつらを殺したものはいかがなさります?また盗賊一人足りませんが」
と 雷禅きくも
面倒そうに「源よ、わしらの使命は盗賊退治じゃ、それ以外は無用」と。また他の侍たちも盗賊をこんなにした化け物がいるような所早く去りたく、すぐさま盗賊の頭の首を切り落とし、箱に仕舞うや 帰り仕度をしていて。
「されば、我一人この地で今一人の探索に残りましょう」と言うや 辺りの検分に入ります。
「では頼むぞ」と厄介事を 雷禅一人に任せ。四人森を立ち去っていきます。
「臆病風に吹かれおって。かんらかんら!」と 一人笑う 雷禅。
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