20人が本棚に入れています
本棚に追加
「記憶にも障害が出てくるでしょう・・・」
医者が淡々と話してきた言葉を思い出す
私は絶対忘れない
娘の事も、夫の事も・・・・
「ママ・・・?」
私の顔を見て娘が心配する
「大丈夫よ。あら、もうこんな時間!寝ようか」
「う・・・ん。ママが一緒じゃなくちゃ眠れない・・・」
ほらね・・。だから、私は忘れるわけにはいかないの
死ぬわけにはいかないの
「ちゃんとお布団に入って」
「うーん。でも、ママがおやすみって言わなきゃダメ!!」
「はいはい。おやすみ」
そう言って、前髪を撫でる
これがいつものやり取り
安心したように眠る顔を私はじっと見つめる
お願い・・・
どうか、この寝顔を忘れさせないで
「おやすみ」
もう一度言う
「おやすみ」
何度も言う
「おや・・すみ・・・」
涙が溢れる
でも、私はこの言葉を言い続けた
声が枯れるまで
忘れることが出来なくなるまで
ずっと・・・ずっと・・・・・・
最初のコメントを投稿しよう!