逃れられない運命

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「記憶にも障害が出てくるでしょう・・・」 医者が淡々と話してきた言葉を思い出す 私は絶対忘れない 娘の事も、夫の事も・・・・ 「ママ・・・?」 私の顔を見て娘が心配する 「大丈夫よ。あら、もうこんな時間!寝ようか」 「う・・・ん。ママが一緒じゃなくちゃ眠れない・・・」 ほらね・・。だから、私は忘れるわけにはいかないの 死ぬわけにはいかないの 「ちゃんとお布団に入って」 「うーん。でも、ママがおやすみって言わなきゃダメ!!」 「はいはい。おやすみ」 そう言って、前髪を撫でる これがいつものやり取り 安心したように眠る顔を私はじっと見つめる お願い・・・ どうか、この寝顔を忘れさせないで 「おやすみ」 もう一度言う 「おやすみ」 何度も言う 「おや・・すみ・・・」 涙が溢れる でも、私はこの言葉を言い続けた 声が枯れるまで 忘れることが出来なくなるまで ずっと・・・ずっと・・・・・・
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