出口のない森の中で

近づいていく…

あたしの初めての社会人生活が始まった。

戸惑いと慣れない仕事、新しい人間関係…。

仕事の事は彼を含む両隣の人に聞いていた。

当時、あたしには付き合って１年になる年下の彼氏がいた。

学生時代には毎日会えていた彼氏とも、仕事が始まり毎日会うわけにはいかなくなった。

当然、喧嘩も増える、夜中の電話でもいつも喧嘩。

眠れないまま仕事に行くことも。

そんな時、彼は話を聞いてくれ、その中でも『彼氏との間で何があろうとも、仕事は仕事だから、仕事はきちんとしなさい』とアドバイスをくれた。

また、お互いにスポーツが好きなこともあり、野球の話で盛り上がることもあった。

仕事を始めて１ヶ月。

暦通りの休みではないあたしは、ＧＷに仕事をし、ＧＷ明けに休みをもらっていた。

ＧＷ前、彼から『ＧＷが彼氏と合わないのはつらいね』と。

その時、あたしの中で何か解らない感情が芽生えた。

勤務編成上、ＧＷの出勤は重ならない……。
ＧＷ明けの公休を含めると、この人とは次にいつ会えるんだろう？

真っすぐに目を見つめて、あたしは言った『ＧＷ明けに休んでも、休みが合う人がいないんで…』

多分、その目には今までにない感情がこもっていたんだと思う。

しばらくの沈黙の後、彼は言った『ＧＷ明けの公休日に、バッティングセンターでも行くか？』

初めてのデート（と呼べるのかどうかは解らないが）、待ち合わせは喫茶店。

緊張で何を話したのか覚えていない。

ただ、一緒にいて楽しかったこと、新しい感情が生まれて来ていることを知った。

でも、彼は既婚者。
この気持ちは封じなければいけない。

片思いでもいい…近づいていく距離とは裏腹に自分の気持ちを閉じ込めることにした。