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子供の頃、寝つきの悪い私はよく絵本を読み聞かせてもらっていた。
ベッドの上で毛布を被り、間接照明だけの薄暗い部屋で読み聞かせれた本は数多ある。
絵本とは面白いもので同じ絵本でも読み手が変われば雰囲気が一変する。
私の好きな絵本で『三匹の子豚』がある。三匹の子豚たちが親元を離れて一人で家を建て暮らすというお話。途中、狼がやってきて食べられそうになるのだ。
お母さんが読んでくれた時の声音は穏やかで最後は必ずハッピーエンドで終わるのが約束されたような安心できる声だった。
お父さんが読み聞かせてくれる時は、声音を変えてか弱い子豚と怖い狼を演じてくれる。
狼が大きく息を吐いて藁の家を壊すシーンの時はお父さんは私の耳元に息を吹きかけてくる。
それが面白おかしくて寝る前だというのにとてもはしゃいだのをよく覚えている。
そしてお兄ちゃん。
お兄ちゃんと私は七歳年が離れているのでたまーに絵本を読んでくれた事があった。
お兄ちゃんはやんちゃ盛りで、絵本を読む時は自分も楽しんでいたように思う。勝手に内容を脚色して内容を変えるのだ。
藁で作ったお家は息を吹きかけるまでもなく鋭利な爪で切り裂いて中へ這入り、木のお家は火をつけてそのまま豚を丸焼きにしてしまおうとか色々滅茶苦茶だった。
結局最後はどうなるんだっけ。
いつも私は最後を聞く前に眠ってる。
「おやすみ」
そんな囁くような声が朧な意識の中、いつも聞こえたような気がした。
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