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ドアに付けられた鈴が、ちりちりと空気を撫でる。
「お帰りなさい。」
「こんばんは、はじめまして。あなたは誰?」
弾けるような、元気のいい声。
「はじめまして、お嬢さん。僕はヨミって言います。今日は冷えたでしょう。今ココアを淹れますから、それを飲んだら夕食にしましょう。」
「そうね。ありがとう。ご馳走になるわ。私朝から何も食べてないからお腹が空いたの。」
「それは大変だ。急いで準備をしますから、待っていてください。足が冷えますから、そこのスリッパを履くといいですよ。」
愛しい人が帰ってきた途端に、屋根が取り払われたかのように、部屋の空気が明るくなる。
慣れきった少しの落胆は、今日も彼女と食卓を囲める嬉しさに覆い隠され、気にならなくなる。
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