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伝書鳩......
かなり原始的な通信手段とは言えるが、大自然の真っ只中と言えるこの場所において、目立つ事も無くかなり効果的な手段と言えよう。実に理に適っている。
最新の機器を使う事が、イコール最適な手段とは限らない。
なるほどね......エマはただ感心するばかりだった。
そうだ......少なくとも珠は、現時点で私よりも色々な情報を入手しているはず......
こっちはまだ入口に足を踏み入れたばかりで、まだこの先のビジョンが何一つ定まっていない。
解らない事を聞いてみよう......
とは言え、公安の機密情報をそう簡単に教えてくれるとも思えなかった。せめて道標だけでも引き出せたなら儲けものだ。
まぁ......ダメ元だ。聞くだけ聞いてみよう。
「あのう......」
「エマさん。悪いがここから引き上げてくれないか?!」
突然、珠はエマの発言を遮った。
そしてその後に放たれた言葉は、エマにとって実に想定外の内容と言わざるを得なかった。
帰れだって?!
エマは動揺を隠せない。俄に表情が強ばり始める。
「正直言って迷惑なんだ......仕事がやりづらくて仕方が無い。このままだと二人とも必ず命を落とす。
憧れのエマさんにこんな事言うのは結構辛いんだけど......どうか察して欲しい」
珠は苦渋の表情を浮かべていた。
結構強そうに見えて、意外とナイーブな性格なのかも知れない。
そんな珠に対し、エマは至極淡々と答える。
「ごめんね珠さん。私もあなたと同じ......使命を受けてここに潜り込んでるの。
決して興味本意で来てる訳じゃ無い。申し訳無いけど、それは受け入れられない」
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