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エマはしっかりと珠の目を見詰めながら、撤退の意思が無い事を明確に宣言した。
「エマさんが、誰に頼まれたのかは知らない。でもあたしは、国家から使命を受けてここに来ている。
これはあたしからのお願いじゃない。国家からの命令と理解して欲しい。解ってくれるよね。
今日はもういいから、明日朝一番でこの寺から去ってちょうだい。
幸いにも、エマさんはまだこの寺に来てから間も無い。何も知らない人間が去るのを、連中も阻止したりはしないでしょう」
珠は少し強ばった表情でエマに通達した。
「珠さん......出来れば言いたく無かったんだけど。でも言わなきゃあなたも納得してくれなそうね。
私もあなたと同じ。国からの依頼でここにやって来ています。
直接依頼して来たのは、公安の神谷局長。つまり、あなたの直属の上司です」
「なっ、何だって?!」
珠は驚きを隠せない。思わず目を大きく見開く。
「嘘は言ってません。嘘だと思うなら、その鳩を使って聞いてみたらどうですか?」
それに対しエマは至極冷静。いや、むしろ冷淡な物言いにすら感じた。
珠の顔は見る見るうちに、赤味を帯びていく。気付けば、阿修羅の如く、顔は激しく歪んでいた。
「嘘だ! あたしは毎日的確に情報を入手して、次々とこの鳩達を使って本部に情報を流してる。
あたしだけじゃ物足りないとでも言うのか?!」
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