第十二章 アマゾネス

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「エマさんも知っての通り、あたし以外にもここに潜入していた公安の先輩が居たの。 その先輩は、なんとここで行われている非合法な証拠のデータをまんまと抜き出した。それ自体は大金星。 でもその後ほんの数分で捕まっちゃって......多分もう殺されてんだろうな。 そのデータなんだけど、未だ見付かってない。恐らく捕まる前にどこかへ隠したか、もしくは誰かに手渡したか......結局解らず仕舞い。凄くいい先輩だった」 珠は思い出したかのように、両の手の平を合わせて目を閉じる。その先輩の顔が、頭に甦ってくるのだろう。 「『出雲大社』の御守りにそのデータが......」 「そう......そこだけはあたしの調べで間違いはない。連中も徹夜で何日も探してたけど、結局見付からなかったの。 最近では、すでに外へ持ち出されてるってもっばらの噂。でもまだ公には現れていないし......実際のところは解らない。 あたしも連中の目を盗みながら、色々調査を進めてるけど、手掛かりが掴めない。ちょうど八方塞がりってとこ」 「出雲大社の御守りか......」 エマは御守りを頭に浮かべ、眉を潜めた。 「エマさん。少しでも自由に動きたかったら、とにかく早く上に上がる事。 この寺は完全な実力社会。入寺が早いか遅いかなんて関係無い。頭が良くて強い人間はすぐに上に上がれる。 まずは組み手で相手をバンバン投げ飛ばしてアピールするといいよ。エマさんならすぐに目に留まるよ」 珠はニヤリと笑う。きっとエマが投げ飛ばすところを見てみたいのだろう。 「では今度、珠さんを投げ飛ばさせて頂きます。楽しみにしてて下さい」 エマもまたニヤリと笑う。 「よしっ、行こうか!」 「はいっ、行きましょう!」 二人は鬱蒼とした森の中に隠された秘密の『アジト』を飛び出すと、一気に戦いの場である『聖経院』へと掛け戻って行った。 時刻は深夜の11時半。 小さな洞窟に残された鳩達は、再び主が戻って来るまで静かに待ち続けるのであった...... 『出雲大社』の御守り...... 実は今飛んでも無い所に眠っている事など、二人が知るよしも無かった。
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