第十三章 白昼の悪夢

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「開店するんじゃ、しょうがないわね。さぁ、奥に移動するわよ。早くしなさいよ、この穀潰し!」 青島麗子はそうなじりながら、未来の背中に蹴りを見舞わせる。 バシッ、バシッ! 「ひえー!」 いつ終わるやも知れない地下での軟禁生活。正直三人の精神状態が限界に達していた事は事実だ。 しかし命が危ぶまれるこの状況下において、わがままばかりも言ってられない。 ポールは二人の警護をエマから固く命じられているのだ。 性格的にはこんな地下で隠れているよりも、圭一や美緒のように、外で暴れまわる事の方が性分とも言えたが、青島麗子は直接的な仕事の依頼者であり、東篠未来はこの事件のキーマンときている。 出て戦うよりも、居城で主の留守を守る事の方が、むしろ重要であり、また難儀とも言えた。 幸いにもまだ敵は、直接的にここへ仕掛けて来てはいない。 ただもし、留守中に攻めて来られたら...... 自分にこの二人を守り切る事が出来るのだろうか...... 徐に周りを見返して見る。 ひ弱な老女と、軟弱な青年がたった二人だけ。 いずれもバトルと言う事に関しては無縁の素人。逃げる事位しか能が無い雛鳥と言えよう。 無敵のエマはここに居ない。 爆発的な破壊力を持つ圭一も居ない。 そして精密機械の頭脳を持つ美緒も居ない。 ふとすると、柄にも無く俯き加減になってしまう。そんな気弱な自分とポールは必死に戦った。 二人を守るのは自分しか居ない! ポールは遠くで戦う三人の仲間の顔を思い浮かべながら、自らを鼓舞した。
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