第十三章 白昼の悪夢

9/13
前へ
/1040ページ
次へ
「お客さん、こっちへ!」 いち早く入店していた『チビデブ』サラリーマンの二人は思わす口をあんぐり。 化石にでもなってしまったようだ。完全に固まっている。 無理も無い。突然後ろからモデル紛いのOL衆が乱入して来て何をしているかと思えば、バズーカ砲を構えている訳だ。 普通はドッキリかと思って、カメラはどこか?と探すであろう。 しかし江角張りのOL達に担がれたバズーカ砲は、どこをどう見ても本物。ロシア国旗が光り輝いているではないか。 発射ボタンを押して、世界の国旗が先端から飛び出して来るとは到底思えなかった。 「アマゾネス参上! 富士国万歳!」 「ひぇ~!」 不運なサラリーマン達は、OL衆の掛け声と同時に、手招きするマスタ一目掛けて我先にカウンターを飛び越えて行った。 ドテッ、バタバタ! 見事な着地とまではいかなくとも、何とか身体はカウンターの内側に落ちたようだ。 背中の下で潰れたゴキブリは、この男達同様不運としか言いようが無い。 「よしっ!」 マスターは瞬時に、カウンターの内側に隠された『CAUTION』ボタンを叩く。 常に危険と隣り合わせの集団が屯ろす拠点だ。これ位の仕掛けを造っておかなければ、命がいくつあっても足りはしない。 すると、 ガタガタ、ガタガタ。 ガシャーン! 突然天井からバリヤーの如く、壁が一気に下がり落ちて来る。ギロチン紛いの落ち方だ。 銀行などにおいては、よくこのような仕掛けがなされているが、それはシャッターであり壁では無い。 落ちた壁にもしっかりと『BAR SHARK』のロゴが入っている。意味不明だ。 この仕掛けにより、アマゾネスを客席に残して、カウンターの内側と事務所の扉は、完全とも言える隔離を成し遂げた。猫の子一匹通る隙間は無い。 よし、これで一安心...... この垂れ壁は、いかなるテロ攻撃にも対応出来るよう、最大限の強度が保障されている。 たかがバズーカ砲ごときに何が出来る...... マスターは、この場においてもまだニヒルな笑みを浮かべていた。 フッ、フッ、フッ......
/1040ページ

最初のコメントを投稿しよう!

365人が本棚に入れています
本棚に追加