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「お客さん、こっちへ!」
いち早く入店していた『チビデブ』サラリーマンの二人は思わす口をあんぐり。
化石にでもなってしまったようだ。完全に固まっている。
無理も無い。突然後ろからモデル紛いのOL衆が乱入して来て何をしているかと思えば、バズーカ砲を構えている訳だ。
普通はドッキリかと思って、カメラはどこか?と探すであろう。
しかし江角張りのOL達に担がれたバズーカ砲は、どこをどう見ても本物。ロシア国旗が光り輝いているではないか。
発射ボタンを押して、世界の国旗が先端から飛び出して来るとは到底思えなかった。
「アマゾネス参上! 富士国万歳!」
「ひぇ~!」
不運なサラリーマン達は、OL衆の掛け声と同時に、手招きするマスタ一目掛けて我先にカウンターを飛び越えて行った。
ドテッ、バタバタ!
見事な着地とまではいかなくとも、何とか身体はカウンターの内側に落ちたようだ。
背中の下で潰れたゴキブリは、この男達同様不運としか言いようが無い。
「よしっ!」
マスターは瞬時に、カウンターの内側に隠された『CAUTION』ボタンを叩く。
常に危険と隣り合わせの集団が屯ろす拠点だ。これ位の仕掛けを造っておかなければ、命がいくつあっても足りはしない。
すると、
ガタガタ、ガタガタ。
ガシャーン!
突然天井からバリヤーの如く、壁が一気に下がり落ちて来る。ギロチン紛いの落ち方だ。
銀行などにおいては、よくこのような仕掛けがなされているが、それはシャッターであり壁では無い。
落ちた壁にもしっかりと『BAR SHARK』のロゴが入っている。意味不明だ。
この仕掛けにより、アマゾネスを客席に残して、カウンターの内側と事務所の扉は、完全とも言える隔離を成し遂げた。猫の子一匹通る隙間は無い。
よし、これで一安心......
この垂れ壁は、いかなるテロ攻撃にも対応出来るよう、最大限の強度が保障されている。
たかがバズーカ砲ごときに何が出来る......
マスターは、この場においてもまだニヒルな笑みを浮かべていた。
フッ、フッ、フッ......
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