第十四章 マンタ洞窟

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「おっと美緒さん、ゲートが見えて来たぜ。まぁ、うまくいくだろ。多分な......」 ハンドルを握る圭一は、実にあっけらかん。常に出たとこ勝負が基本だ。 「解ってるわよ」 一方美緒は少し緊張した様子。唇を噛み締めている。 やがてゲートが目の前に迫って来ると、内側から警備員らしき男が、警棒片手にのっそのっそと怒り肩を揺らしながら現れて来た。 キィー。 古びたトラックは油が切れたようなブレーキ音を立ち上げながら、ゲートの前でゆっくりと停止した。 「なんだおい、今日はいつものオヤジと違うな」 サイドウィンドウ越しに半笑いを浮かべながら、警備員が圭一に問い掛けた。相手を見下すような実に横柄な言い方だ。 「はい、通行証......太平社長はゴルフだ。誰が運んだって荷物のゴムが変わる訳じゃねえだろ」 圭一は、不愉快千万......そんな表情を浮かべている。 態度のでかい半端者は、圭一が最も嫌いとするタイプと言えた。 「ふんっ、お前新米か? 見ねえ顔だな?」 「俺からしたら、てめーが見ねえ顔なんだよ! 早く通せ、このボケが!」 「何だとこのやろう! やろうってのか?!」 警備員は警棒を振り上げ、今にも殴り掛かって来そうな勢いだ。 「おお、やるか?!」 圭一は運転席の扉を開けて、勢いよく外へと躍り出る。一触即発のムードだ。
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