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「ちょっと待って!」
ただ事ならぬ雰囲気を察し、美緒がすかさず二人の間に割って入る。
「このやろう! てめえ!」
「ほら、掛かって来いよ!」
気付けば美緒を間に挟んで、二人は互いに襟首を掴み合っているでは無いか。
まるでサンドイッチ状態だ。暑苦しい男共に挟まれた美緒はたまったものでは無い。
「こらっお前達、何をやってんだ!」
すると何やら黒服スーツのサングラス男が、奥から忌々しい顔付きでやって来る。
「あっ、すみません」
それまで我が物顔で立ち回っていた警備員が、急に畏まり、気付けば背筋を伸ばして直立しているでは無いか。
今の今まで襟首を掴み合っていた事など、忘れてしまったかのようだ。
「問題は起こすなっていつも言ってるだろう......全くどうしようも無い奴だ......そんで......あんたらはどちら様?」
黒服スーツ男は、今度は二人に顔を向けて問い掛けた。苦虫を噛み潰したかのような表情だ。
「こちらの方こそすみません。全く血の気が多くて困ってます。私達はご注文の荷物を運搬して来た者です」
美緒は圭一に呆れたような視線を向けながら、黒服スーツに説明した。
圭一よりも遥かに血の気の多い美緒にしてみれば、有り得ない程の謙虚さだ。逆に怖い。
「注文の荷物?」
「はい、ゴムです」
「......」
黒服スーツ男は無言でトラックの後部へ回り、中の荷物の確認を始める。
見れば見渡す限りのゴム板が、天井まで所狭しと山積みされている。トラックの車高が下がるのも頷ける。
こんな大量のゴムを一体何に使うのか?
そんな事は納品する側からして見れば、どうでもいい話であり、また知るよしも無かった。実際のところはよくは解らない。
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