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「積み荷は全部ゴムか?」
「はい......見ての通りです」
静寂しきった深い森の中に、ピーンと張り詰めた空気が重く二人にのし掛かる。
すると......
「......よし、通れ」
それは二人が期待していた通りの返答だった。
小躍りする気持ちを必死に抑えながら、美緒は努めて冷静沈着に答える。
「有り難うごさいます。では行きましょう」
そう言いながら美緒は圭一に目で合図を送った。
ブルルン......
トラックのエンジンに再び火が点ると、それを待っていたかのように、ゲートはゆっくりと上昇を始める。
黒服スーツ男と警備員を横手に見下ろしながら、圭一と美緒はゲートの奥へとトラックを進めて行った。
「美緒さん。抜かりは無いな」
「当たり前よ。私を誰だと思ってるの?」
美緒は、カード大のパスカードを披露しながらニヤリと笑う。
それが警備員のポケットから、挟まれていた時に抜き出した物である事は言うまでもない。
圭一の挑発的演技もアカデミー賞並ではあるが、一瞬のチャンスを逃さない美緒の指さばきもMVPに値する。
「GOOD JOB 美緒さん!」
「楽勝よ」
珍しく美緒の顔は得意満面。余程嬉かったのだろう。
ゲートを抜けたトラックの正面には、やがて大きな『エイ』の口のような入口が見えて来た。
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