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「何に使うんだろうな? 俺達は次から次へと運ばれて来る荷物を、片っ端からこのベルトコンベアーに乗っけるのが仕事だ。
この荷物がゲートの向こう側に行ってどうなるのか何て事は知らん。なんせこっから先は誰も入った事無いからな。あらよっと」
凄い身体つきだ。これだけ重い荷物を毎日運んでいれば、誰でもこんな身体つきになるのだろう。
「へー、誰もこのゲートの先に行った事ないんだ?」
圭一はタバコに火を点けながら、いかにも世間話の態で質問を続ける。
舌が滑らかそうなオヤジだ。意外と情報を仕入れられるかも知れない。そんな期待感が否応無しに高まっていく。
「おいおい、ここは火気厳禁だ。見付かったら、どやされるぞ。
そんで何だっけ?......ああ、ゲートの先の事か。俺達は朝来て夕方帰るだけのバイトみたいなもんだからな。
お偉いさん達は、そこのごっつい扉をいつも行き来してるぞ。
うちらはそこを通過する為のパスカード渡されて無いから行きようがない」
そんな月並みの会話を続けながらも、作業員は淡々とゴム板をベルトコンベアーに乗せていった。
「ふーん。なるほどね。パスカードか......ありがと」
圭一は作業員とそんな会話を続けながらも、注意深く周囲を観察していった。
まず目の前には、行く手を阻む巨大ゲートが君臨している。
このゲートの先に進む経路は、見たところ二つしか無さそうだ。
一つは荷物を運ぶこのベルトコンベアー。
よくよく見れば、開口部がゴム板にぴったり合わせて作られている。
人間がここを通過するのはまず無理。間接を20ヶ所以上外して、頭蓋骨を削らなければ通れそうにも無い。
もう一つは、今作業員が話していたそこの頑丈な扉だ。
常に施錠されていて、パスカードが無いと通過は不可能と思われた。
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