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「はい、OK。積み降ろし完了!」
作業員は額に浮かんだ汗を袖で拭いながら、声を張り上げた。
洞窟の中は幾分気温が保たれているとは言え、外は樹氷が広がる真冬の世界。皆の吐く息が真っ白に浮かび上がっている。
「おう、ありがとよ」
圭一は作業員達に一言労いの声を掛けると、素早くトラックに乗り込みエンジンに火を点した。
ブルルン。
ガーッ......
............
............
重い積み荷を下ろしきったトラックは、往路の時に比べて明らかに車高が高い。マンタ洞窟の一本道を快調に走り抜けて行った。
ガガガガガ......
ガガガガガ......
「ああ、戻って来やがったな......全くムカつく野郎だ!」
ゲートの手前では、先程圭一と揉めた警備員が未だ納得がいっていないのか、怒りあらわに歯軋りをしている。
「もう、止めとけよ。暴れると、またどやされるぞ」
「解ってるって。ちきしょう!」
湯タンポのように顔を赤らめた警備員は、目の前を通過するトラックに足元の小石を蹴り飛ばした。
エイっ!
ガツッ!
石は高速回転するトラックの前輪にあたり、更なる勢いを加えて跳ね返って来た。まるで石に紐でも付いているようだ。
ゴツン!
「うわぁ!」
石は見事、警備員のおでこに直撃。まるで漫画を見ているような光景だ。
「いってぇ......」
「......」
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