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そんな憐れな警備員の横を悠々と通り抜けて行く古びた一台のトラック。
運転手は余裕の笑みを浮かべているのかと思いきや......
「あわわわわ......バレないで良かった」
深く帽子を被った運転手は妙に怯えた様子。実に意外とも言えるリアクションだ。
『俺に成済まして、トラックを運転して帰れ』
そんな無茶な事やらせないでくれよ......
健介はブルブル身体を震わせながら、必死にハンドルを握っていた。
しかも助手席に座る女性に限っては、どう見てもビニール製だ。遠目に見ても人間には見えない。
帽子を深く被り、口を真ん丸に開けていた。いかがわしい人形に服を着せている事は明らかだ。
よくバレないで通過出来たものだ。運がいいとしか言いようが無い。
やがてトラックは更に加速を加え、森の中を猛スピードで突き抜けて行く。
圭一と美緒を森の中に残して......
「美緒さん。とりあえずは上手くいったな」
「上出来ね。でもここからが本番よ」
圭一と美緒の二人は、ゲートの内側、マンタ洞窟から凡そ100メートル程距離をおいた森の中で身を潜めていた。
「夜まではまだ時間がある。少しゆっくりしようや」
圭一は防寒具に身を包み、大の字になって寝っ転がった。レディーを前にして実に大胆な振る舞いだ。
「あいにく私は、熊男と添い寝するつもりはないんで」
冷淡に突き放す美緒。嫁入り前である事は間違い無い。
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