第十四章 マンタ洞窟

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「痛ってーな......」 見れば圭一の左頬には、3本の赤い線が斜めに刻まれている。そこから流れ落ちる鮮血は顎を伝い、地に垂れ落ちていた。 顔の左側まで傷物になってしまうと、もう隠しようが無い。困ったものだ。 「だっ、大丈夫、圭一さん?!」 美緒は走り続けながらも、顔面蒼白で圭一を気遣った。 「こんなのかすり傷だ。どうって事無い。さぁ、次が来るぞ! はいっ、美緒さん!」 圭一はリュックからステッキのような黒い棒状の物をまさぐり出した。そしてそれを上下に伸ばしながら、美緒に投げ飛ばす。 「ほいっ、キャッチ!」 美緒は後ろにも目が付いているかのように、背面から器用にそれをキャッチした。 その時だ。今度は正面から二匹目が鋭い爪を立てて美緒に襲い掛かって来る! 先程よりも少し大柄な猿だ。口からダラダラとヨダレを垂らし、顔全体に赤い血管が浮き上がっている。 動きの俊敏さも去る事ながら、その顔の表情一つとっても、凡そ動物園の日本猿とは一線を画した獰猛さが滲み出ていた。 野猿公園で他人のメガネを持ち去ったイタズラ猿も、この気違い猿を見てしまうと、可愛く思えて仕方が無い。 「なめんなよ!」 しかしそんな敵を前にしても、美緒に怯む様子は微塵も無い。それどころかむしろ楽しんでるようにしか見えなかった。
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