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「一丁上がり!」
「ナイスだね。美緒さん!」
「あたぼうよ!」
美緒の顔はいつにも無く生き生きしている。
娘を誘拐されて眠りにも就けない母親の顔は一体どこへ行ってしまったのだろうか?
自称『バトルマニア』を豪語する美緒らしいと言ってしまえば、それまでの事ではあるが......
多分リアルなシューティングゲーム程度にしか思っていないのだろう。
「こりゃ、ちょっときりが無いな......次から次へと集まって来るね。参った。ハッ、ハッ、ハッ」
時間と共にその数を増やし続けていく不気味な赤い光......
一体どれだけの数が出現して来るのだろうか? 推し測るのは難しい。
「そうね......面倒臭いからまとめて殺っちゃいましょう」
そんな夢みたいな事を、いとも簡単に言ってのける美緒。あまりの恐怖に頭がおかしくなってしまったのだろうか?
深い森の中を全速力で駆け抜けながら、尚も楽しそうに世間話擬きを続ける美緒と圭一。
遺伝子操作された凶暴殺人生物兵器に追い掛けられながら、どれだけ余裕をかましているのだろうか。
そんな余裕の会話を続けているうちにも、赤い光はどんどんその数を増していき、やがて二人が走り行く正面にも大量に出現し始めて来ている。
完全に挟み撃ちされた状態だ。前にも進めず、後ろにも戻れない。
正に八方塞がりとはこう言う時の為に使う言葉なのであろう。
「そろそろいいわね。圭一さんあれ出して」
美緒は突如足を止めて、圭一に話し掛けた。
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