第十四章 マンタ洞窟

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「あれって? 何?」 美緒の突然の停止に慌てて足を止める圭一。行動が唐突なら喋りも唐突だ。 「あれよ、あれ。ピカッと光るやつ。ゴーグルもね。それと、そうそう......トランシーバーも出しといて」 「ピカッ? ああ、マグナム閃光弾ね。それとゴーグル......あとトランシーバー? 何に使うの?」 圭一は美緒のリクエストに従い、大きなリュックの 中から、次々とお言い付けの品々を取り出していく。 長期の潜伏を想定してでの装備だ。リュックの中はそれなりに充実している。 とは言え周りを見渡すと...... 360度余す所無く、怒濤の光が押し寄せて来ている。先頭の猿はもう目と鼻の先に迫っていた。完全に囲まれている。万事休すだ! キキキー! キキキー! 「ほら、たんまり集まって来たわよ。早くゴーグル着けなさい! もたもたしてたら猿に顔引っ掛かれちゃう。じゃあいくわよ......はい、3、2、1!」 えい! ピカッ!!! 大きさは野球のボール程度。 ずっしりと重い球形。 誰が名付けたかは知らないが、それを『マグナム閃光弾』と呼ぶらしい。 美緒がそれを地面に投げ付けると、辺りは一瞬にして真っ白な光に包み込まれた。まるで樹海の森に白夜が訪れたみたいだ。 もしゴーグルを着用していなければ、間違い無く失明していたであろう。 キキキキキッ! キキキキキッ! キキキキキッ! 美緒と圭一を取り囲んでいた猿達は、一体何が起こったのか訳も解らず、ただ闇雲に四方を走り回っていた。 全く目が見えていないのだろう。大木に激突する者。互いに正面からぶつかり合っている者。凡そ50匹の凶暴猿達は、正に大混乱を引き起こしていた。
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