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「さぁ、美緒さん。この隙に!」
圭一は美緒の『めくら攻撃』がまんまと功を奏したのを確認すると、大きなリュックを背負いその場を立ち去る準備に掛かった。
「ちょっと何一人で逃げようとしてんの? まだ終わって無いわよ」
美緒はそんな圭一の行動をきっぱりと制した。
「まだ何かするんか?」
「......」
美緒はそんな圭一の問い掛けには答えず、足元に転がるトランシーバーを徐に手に取った。
そしてスイッチをONにし、ボリュームレベルをMAXに設定すると、なぜか遠くへポ~ンっと投げ飛ばす。
ヒュ~、ガツン。
トランシーバーは鈍い音を立ち上げ、大木の根元で固まった。
一体何をしようとしてるんだ?
圭一には、美緒の行動が全く理解出来ない。
そんな圭一の戸惑いを他所に、美緒はもう1つのトランシーバーを手に取り、バスガイドの如く案内を始めた。
「あー、あー......はいっ、お猿の皆さん。私はここですよ! 早く集まって来ないと、逃げちゃいますよ!
繰り返します。お猿の皆さん。私はここですよ! 早く集まって来ないと、逃げちゃいますよ! あー、あー......」
キキキキキッ!
キキキキキッ!
キキキキキッ!
50匹の『めくら猿』達は、その声に見事に反応した。
四方に分散していた猿達は、その声に引き寄せられ、美緒が投げ飛ばしたトランシーバーの元へと一気に集まって来る。
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