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ドスンッ!
「痛あああ......」
「あっ、すみません。ちょっとよろけちゃって」
ドスンッ!
「やだあっ!」
「す、すみません。つまずいてしまいました」
「ちょっとさっきから、なんでみんな触ってもいないのに投げ飛ばされてんの? 何か魔法でも使ってんじゃないの......」
今日も晴天。
天を見上げれば、雲一つ無い透き通るような青空。
『聖経院』の広大な日本庭園の中心に位置する雷鳴池の畔では、今日も尼達による『組み手』が催されていた。
いつもであれば、拍手喝采、大盛り上がりとなるこの『組み手』も、今日はなぜかいつもと少し空気が違う。一種異様な雰囲気に包まれていた。
その理由は他でも無い。
一人の新顔が魔法を使って手当たり次第に尼達を投げ飛ばしていたからだ。
彼女らが言う『魔法』
人はそれを『合気道』と読んでいた。
「なんだ全然組み手になってないじゃないか。誰かエマと戦える奴は居ないのか?......おい、珠。お前はどうだ?」
今日も行司を勤める龍貴は呆れ顔で仁王立ち。
これ程までに一方的な戦いとなってしまうと、逆に尼達のモチベーションが下がりやしないかと気が気で無い。
一方、龍貴に振られた珠。勝ち気な事においては右に出る者が居ない。
『聖経院』きっての猛者の反応はと言うと......
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