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勢いよく立ち上がり、声高らかに宣言する。
「今日はちょっとお腹の具合が悪いので、また別の機会に。ああ痛たたた......」
珠は白々しく下っ腹を支え、地面にしゃがみ込む。
誰が見ても仮病である事は明白。よっぽどエマに投げ飛ばされるのが嫌なのであろう。
「えっ、何? 珠さんが逃げるの? 信じらんない!」
「うっそー、マジで?」
回りの尼達が俄にざわめき始める。
皆我こそはと、競って土俵に上がる聖経院の伝統が崩れ落ちていく瞬間だった。
「そうか、仕方が無い。じゃあ、ちょっと私が相手してみようか」
そう呟きながら、龍貴はエマの顔を見詰め、土俵へと上がり始める。
「うわぁー、すごー! 龍貴さんが新顔と戦うの?」
「こりゃあ、見物だわ!」
突然盆と正月が同時にやって来たような賑わいを見せる雷鳴池の畔。
多分生意気な新顔が、龍貴に叩きのめされるのを見たくて仕方が無いのだろう。
龍貴さんか......どうしよう。
多分龍貴さん位の人だから......
手を抜いたらバレるんだろうな......
やっちゃうか!
よしっ、やろう!
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