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「さぁ、エマ! 手加減しないよ。どっからでも掛かっといで!」
龍貴は土俵に立ちはだかると、ファイティングポーズをとった。
「宜しくお願いします!」
エマも龍貴に習い、土俵の中央で力強く身構えた。
目に見えぬ厚いオーラが二人を包み込み、あたかもオーラ同士が火花を散らしているかのような錯覚に囚われる。
バチバチッ!
音が聞こえて来るようだ。
............
............
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1分経過。
構えた途端、氷河の如く身体を硬直させた二人。
ドクン、ドクン......
心臓の音だけが、波動のように響き渡る。
ギャラリーと化した尼達は、一体とうなるのかと、ただ固唾を飲んで見守っていた。
誰も口を開く者は居ない。完全に雰囲気に呑まれている。
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更に1分経過。
1分前と何ら変わりは無い。
二人は未だ身体を硬直させたまま、なおも『静』を貫き通している。
これはもしかしたら我慢大会なのでは無いか? そんな疑念すら生じる程に『動』を封印した二人だった。
「ちょっと、一体どうなってるのよ」
「知らないわよ。二人に聞いてみたら?」
さすがに痺れを切らし始めたギャラリー衆。無理も無い。かれこれ2分間。二人はマネキンの如く全く動いていない。
何なんだ......全く隙が無い。
全然勝機が見出だせないじゃんか......
これは先に動いたら必ずやられな......
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