第十五章 四神

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熱風の如く自分の身体を包み込んでくる『静』なる闘争心。 『死人』が対峙しているのかと間違う程に圧し殺した存在感。 まるで大門との一騎討ちの再現のようだった...... もしあの時の手痛い敗戦の経験が無ければ、間違い無く自分は龍貴よりも先に懐に飛び込んでいた事だろう。 今思い返せば、龍貴は右手を庇うような構えをしていた気がする。 一瞬その右手に喰らえつきそうになった自分を、必死に堪えた記憶が甦る。 ほんの5分前の記憶ではあるが、極限とも言える精神状態であった為なのか、随分前の出来事に思えて仕方が無い。 果て? 偶然か? 確か自分は昨年末、大門とのバトルで奴の右指を折ったはずだ。 あらためて、目の前に立つ龍貴の姿まじまじと見詰めてみる。 色白で細い身体だ。 色黒で丸太と見紛う程の巨漢だった大門とは、似ても似つかない。 私ったら何を想像してるんだろう...... 龍貴さんが大門? バカみたい...... エマがそんなあり得ない妄想を巡らせていたその時だ。 ピカッ! ゴロゴロ! 「うわぁ、雷だ!」 空を見上げれば、まだ夕方だと言うのに、かなり薄暗い。 これは一雨来そうだ。 「はい、じゃあ今日はこれで解散。みんな雨に当たる前に早く戻って! それからエマ」 「あっ、はい。何でしょうか」
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