365人が本棚に入れています
本棚に追加
熱風の如く自分の身体を包み込んでくる『静』なる闘争心。
『死人』が対峙しているのかと間違う程に圧し殺した存在感。
まるで大門との一騎討ちの再現のようだった......
もしあの時の手痛い敗戦の経験が無ければ、間違い無く自分は龍貴よりも先に懐に飛び込んでいた事だろう。
今思い返せば、龍貴は右手を庇うような構えをしていた気がする。
一瞬その右手に喰らえつきそうになった自分を、必死に堪えた記憶が甦る。
ほんの5分前の記憶ではあるが、極限とも言える精神状態であった為なのか、随分前の出来事に思えて仕方が無い。
果て?
偶然か?
確か自分は昨年末、大門とのバトルで奴の右指を折ったはずだ。
あらためて、目の前に立つ龍貴の姿まじまじと見詰めてみる。
色白で細い身体だ。
色黒で丸太と見紛う程の巨漢だった大門とは、似ても似つかない。
私ったら何を想像してるんだろう......
龍貴さんが大門?
バカみたい......
エマがそんなあり得ない妄想を巡らせていたその時だ。
ピカッ! ゴロゴロ!
「うわぁ、雷だ!」
空を見上げれば、まだ夕方だと言うのに、かなり薄暗い。
これは一雨来そうだ。
「はい、じゃあ今日はこれで解散。みんな雨に当たる前に早く戻って! それからエマ」
「あっ、はい。何でしょうか」
最初のコメントを投稿しよう!