第十五章 四神

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 ※  ※  ※ 時刻は20時50分。 鎌倉時代の武家屋敷を彷彿させるような『院長室』 の奥座敷では、色白でスラリと背の高い尼が一人、机の上に飾られた一枚の写真と向かい合っていた。 「零光(れいこう)樣......あともう少しの辛抱です」 高貴漂う一枚の尼の写真。 それは他でも無い。この大所帯『聖経院』の長たる零光の写真だった。 写真を見る限り、年齢50には達していないだろう。エマや龍貴から放たれる血気盛んなオーラとは違い、落ち着いた熟練のオーラが滲み出ている。 その零光は今、国家転覆を狙う危険分子のレッテルを貼られ、公安で囚われの身となっていた。ここを去ってからすでに半年が経過しようとしている。 「留守はこの龍貴がしっかりと守っております。ご安心下さい。 我が民族の長きに渡る夢『富士国』独立の時が、いよいよ間近に迫って来ました。 もう間もなくです。零光樣......」 静寂仕切った『院長室』 ただ写真に向かって話し続ける龍貴だった。 すると、そんな静寂を打ち破るかのように...... トントン。 扉をノックする音が。 龍貴は夢から覚めたような表情を浮かべ、慌てて扉に振り向く。 ああ......エマを呼んでいたんだ。
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