第十五章 四神

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 ※  ※  ※ エマは『院長室』を追い立てられるように退出すると、一人暗がりの中、雷鳴池の橋の上で池のカメをただ何となく眺めていた。 絵に描いたような見事な満月が、雷鳴池、そして広大な日本庭園に美しい花を添えている。 このような切迫した状況でも無ければ、月を肴に一杯とでも言いたくなる場面ではあるが、とてもそんな風流に浸れる心境では無かった。 今自分は最も重要な局面に立たされている...... 敵の中枢に入り込む事は、情報を入手する上で、正に願ったり叶ったりと言えよう。 しかし同時に、自分の動きも敵にはスケルトンに映ってしまう事となる。 正に諸刃の剣とはこう言う時の為に使う言葉なのだろう。 それはそうと...... もし部隊が違法行為を行うような事に至ったら...... まさか自分が先頭に立って音頭を取る訳にもいかない。 かと言って、拒否したら拒否したで、ここまで積み上げた信頼は一気に失墜する。それどころか、身の危険に晒されるやも知れない。 とにかくそう言う窮地に追い込まれる前に、とっととけりをつければいいと言う事だ。 それと、龍貴さんは『玄武』の部隊とすぐに会えるって言ってたけど...... いつ、どこで会えるんだろう。 確か全部で6人って言ってたっけ......まさか新顔の洗礼とか言って、いきなり襲って来たら笑えるな。 ハッ、ハッ、ハッ。 エマがそんな余裕な笑みを、橋の上で浮かべたその時だった。 ザッ、ザッ、ザッ。 ザッ、ザッ、ザッ。 突如周囲に響き渡る複数の足音。 ザッ、ザッ、ザッ。 ザッ、ザッ、ザッ。 それは1人や2人のものでは無かった。 4人、5人? いや6人?! ザッ、ザッ、ザッ。 ザッ、ザッ、ザッ。 気付けば、エマを挟み撃ちするかのように、橋の両端から複数の影が迫り来ているではないか。 影の数は全部で6体。その全てから殺気が滲み出ている。次の瞬間に襲って来る事は明らかだ。 噂をすればなんとやら......ですか。
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