365人が本棚に入れています
本棚に追加
橋の幅は人一人がやっと通れる程度。決して広くは無い。
退路が絶たれている代わりに、6人に囲まれて一斉攻撃を受ける心配も無かった。
2人づつ3回片付ければそれで済む話ではあるが、敵も決して土偶と言う訳では無い。むしろ精神的にも肉体的にも、それなりの訓練を受けた猛者と言っても過言では無かろう。
ジリッ、ジリッ......
ピンと張り詰めた空気の中、左右から摺り足で近寄って来る刺客。
エマは橋の中心で息を凝らし身構えた。
「あんたら......『玄武』か?」
エマは静かに問い掛けた。
「そう......『玄武』」
照り輝く月光を背に向けて、真っ黒のベールに包まれた『玄武』は至極冷静に答える。
「一体何しに来た?」
「......」
無言のまま、鋭い視線をエマに突き刺しながら、獲物を取り囲む肉食獣は、ジリジリと更にその間合いを詰めて行った。
飛び道具や刃物を持っている様子は無い。
と言う事は......
私の力を確かめに来たってとこか。
さっき龍貴は『すぐに会えるだろう』
そのように話していた。
それがこう言う事って訳か......
だったらワイン飲ませるなよ。1杯にしておいて良かった。危ないところだ。
まぁ、いいや。面白い。
返り討ちにしてやろうじゃないか!
エマの血圧は急上昇。元々こう言う戦い事は嫌いじゃ無い。
『富士国』の精鋭部隊『玄武』6人に対して、こっちはたったの1人。しかも少しワインが回ってる。ちょうどいいハンデだ。相手にとって不足は無い。
最初のコメントを投稿しよう!