第十五章 四神

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エマが応戦を決意し、大きく息を吸ったその時だった。 スッ。 僅かな音が立ち上がると、次の瞬間には両サイドから突然影が近寄った。 スッ、ススッ! 「「テイャー!」」 甲高い掛け声と共に『玄武』の先鋒達は左右から同時に拳を突き出した。 ............ ............ ............ ところが、一気呵成に詰め寄った二人は、次の瞬間、なぜか目の前に互いの顔を見詰め合わせていた。 互いが放った拳が、互いの頬を掠め合い、危うく同士討ちになるところだ。 「「えっ?」」 瞬きする前までは、間違い無くそこに居たはずのエマの姿が、今はなぜかそこには無い。 消えた?! 瞬間移動?  そんな有り得ぬ離れ業が脳裏を過る。 ??? ??? 月光が照り付ける五条大橋に、颯爽と駆け参じた二人の弁慶は、忽然と消えた牛若丸に動揺を隠せない。 残念ながら浮き足立った戦士に、もはや勝機は残されていなかった。 やがて足元から、突き刺ささるような殺気が昇龍の如く立ち上がる! なっ、なに?! なんと橋の裏側から突如伸びて来た手が、自分の足首をもの凄い力で掴んでいるではないか。 そして、 バシャーン! 「キャー!」 先鋒の一人は見事に池の中へと投げ飛ばされた。 そしてもう一人も...... バシャーン! 「キャー!」 一瞬にして二人の弁慶は真冬の行水。物好きとしか言いようが無い。 一丁上がり! はい次いこうか!
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