365人が本棚に入れています
本棚に追加
「よっこらしょっと。ホイッ!」
突然橋の裏側から舞い戻って来たエマ。残った8つの目が一斉にエマに向けられる。
今の一連の攻防を、もしエマ目線で解説するとしたなら......
敵に襲い掛かられたので、素早く橋の下へと回り込み、足を順番に引っ張っただけの単純作業。そんなところだ。
エマからしてみれば、朝飯前の話であったに違い無い。
とは言っても、そんなジャッジを瞬間的に下せるエマの創造力は、豊富な経験に寄って培われた彼女だけが持つ特異なスキルと言わざるを得なかった。端から見れば、並大抵な事では無い。
エマ程のレベルになってしまうと、それ位の事が当たり前になってしまうのが逆に怖い。
なかなかやるじゃん......
そんな気持ちの現れなのだろう。
続く二人の『玄武』は、奇妙な薄笑いを浮かべ、ゆっくりとエマの元へと近付いて行く。
「さあ、次おいで」
エマはニコリと微笑み掛ける。
そして直ぐ様、次の攻撃が開始された。息つく間も無い。
「テヤァー!」
再び左右からの同時攻撃。
左の刺客からは剃刀のような右ストレート。拳の風を切る音が聴覚を刺激する。
うっ、速い!
エマは本能的に顔を後ろに背け、拳の軌道からの離脱を図る。
辛うじて拳は避けれたものの、振り向き様、今度は右の者から飛んで来た上段蹴りがすでに目の前に。
バシッ!
エマは間一髪、左肘でその鋭い蹴りをガードした。
痛ってぇ......
見た目よりも遥かにその蹴りは重かった。まるでホームランバッターに金属バットで殴られたような感触だ。ガードした左肘の骨が軋むように痛む。
最初のコメントを投稿しよう!