第十五章 四神

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彼女らの身体には、徹底した学問としての基本が叩き込まれていた。 ここまで見るに、彼女らの呼吸、間合い、拳の出し方等々、全ては基本を忠実に再現した『型』であり、これはこれで目を見張るものがある。 武術に限らず、全ての営みには必ず基本が有り、基本を避けて通れば、その後間違い無く、半端な混ざりものが出来上がってしまう。 もし今回のような、狭い橋の上などと言う特殊な場所が戦いの場に選ばれていなければ、間違い無くエマは苦戦を強いられていたに違い無い。 そうならなかった理由は、彼女らが精鋭部隊『玄武』であると言う事へのおごりがあった事と、エマを過小評価していたみくびりの気持ちがあった事が大きく左右している。 敵に勝つ為には、まず己を知り、そして敵を知る事。基本に忠実な『玄武』の戦士も、そんなセオリーにだけは忠実で無かったようだ。 残りはあとたったの2人...... しかしこの者達は、それまでの4人とはどこか雰囲気が違う。 これまで、歴然たる力の差を見せ付けられながらも、浮き足だった様子は皆無。余裕すら伺える。 その余裕は勝利を確信している事の現れなのか、それともただのハッタリなのか...... 現時点では解らない。 ただ突き刺さるような目に見えぬ威圧感は、彼女らがここに現れた時から、ひしひしとエマに突き刺さり続けていた。 今池の中で亀と水浴びしている4人とは、一線を画したスケールの大きさを感じざるを得なかった。 『富士国』の精鋭と言うだけ有り、やはり只者では無い。
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