第十五章 四神

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エマは目を瞑り、息を潜め、耳をそば立てた。 彼女らの匂いを嗅ぎ、呼吸を聞き、風を肌で感じた。 ズズッ、ズズッ。  ズズッ、ズズッ。 左右から、爪先を擦る僅かな足音がステレオのように聞こえて来る。心を研ぎ澄ませば、それが映像となり自然に頭へと浮かび上がって来る。 ハァ、ハァ。  ハァ、ハァ。 二人の呼吸音が聞こえる。この呼吸が止まった瞬間が攻撃開始の合図だ。 ドクン、ドクン。  ドクン、ドクン。 二人の鼓動が音波となり肌に伝わる。まだ一定のテンポを刻んでいるようだ。 このテンポが崩れた途端、左右から拳が放たれる。 4m、3m、2m...... 身体を硬直させながら、ゆっくりと自分に近寄って来る二人の姿が映像となって頭に写し出され始めた。 人間の視界は180度が限界。左右両極から近寄る者を同時に見る事は出来ない。 しかし心の視界に限界は無い。近寄る二人の姿が目の前のスクリーンを二分し、3D映像となって写し出された。 見える、見える......丸見えだ。 我が事成れり! エマが戦う前から勝利を確信したその時だった。 バサッ!  バサッ! 突如、続けざまに立ち上がった二つの打撃音。 一体何が起こったのか? ............ ............ 水を打ったような静けさが辺りを包み込む。池の中から固唾を飲んで推移を見守っていた4人も、余りの一瞬の出来事に、目も頭もついて行っていなかった。 そして、 ............. 「「うっ、うう......」」 突如、二人の刺客は崩れるように倒れ落ち、そのまま池の中へと消えて行った。 バシャーン!  バシャーン! 「「ちめたーい!」」
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