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時刻は23時半過ぎた頃。あとちょっともすれば、新たな一日が幕を開ける、そんな時間だ。
十五夜にも匹敵する満月の灯りは、橋の真ん中で一際大きく見えるエマと、『雷鳴池』の中で一際小さく見える『玄武』6名を、おぼろ気に浮かび上がらせていた。
なんとも言えぬ幻想的な空間だ。ここが深海であれば間違いなく竜宮城と見紛うであろう。
「ちょっとあなた達......いつまでそんな所に浸かってるつもり? 風邪引くわよ」
エマは橋の上から下を覗き込み、呆れ顔。
池の中で何意地張ってるんだ......
いくら強靭な精神力を持っている精鋭とは言え、季節は1月中旬、冬真っ只中だ。心と身体は別物と言ってもよい。
「ふんっ!」
負けた事が余程悔しいのか? 6人揃ってそっぽを向いている。
意外と子供だな......
このまま無視して置いて帰るのも何だか気が引けるし......
かと言って、自分がここに居ると、出てくるタイミングも掴めなさそうだしな......
どうすっか?
全く世話が焼ける......
「よしっ」
エマは決心を固めると、いきなりツカツカと橋を駆け降りて行った。
なっ、何するすもり? こっち来る?
6匹の亀達は池から顔だけを出し、何やら狼狽えた様子。別に捕って食おうと言う訳では無い。
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