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バサバサッ。
二本のロウソクの灯りだけで照度を保っている小さな洞窟の中、落ち着きの無い鳩の羽ばたき音だけが、妙に耳につく。
そんな中......
「えーっ、エマさん、それでOKしたの?!」
「だって、自由に動き回るには、上に登らなきゃダメだって言ったの珠さんじゃん」
「いや、確かにそうは言ったけどさ......寄りによって『玄武』はまずいっしょ。しかも隊長だって! マジで? ハッ、ハッ、ハッ」
「一体何がおかしいのよ」
エマの顔は少し膨れっ面だ。
『院長室』における龍貴との会合の後、珠の『アジト』にて密談を重ねる尼もどきの二人。
誰にも聞かれる事無く、落ち着いて話せる場所と言ったら、ここくらいしか無かった。
時刻はすでに日付を跨いでいた。『聖経院』ではもうすっかり深夜とも言えるこの時間。
「今日珠さんに来て貰ったのは『富士国』と『アマゾネス』の事を教えて貰いたかったからなの。
私も珠さんの捜査に協力するから、知ってる事全部教えてよ。お願い!」
エマは白々しく、珠の顔の前で両手を合わせた。
「しょうがないわね。この間の眉間のパンチの件も有るし....いいわ......教えてあげましょう」
「有り難う珠さん。恩にきります!」
ロウソクの灯りは小さな洞窟内をオレンジ色に染め、微風に靡く度に、鳩達の黒い影が大きく揺れた。
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