第十五章 四神

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『富士国』の日本からの独立...... 普通に考えれば、そんな事出来る訳が無い。しかしここに一つ暗雲が立ち込める。それは他でも無い。『新党富士』秋葉秀樹の存在だ。 ついこの間『聖経院』の院長室に訪れていたのは、間違いなくその秋葉秀樹。『富士国』と繋がっている事はもはや疑う余地が無い。 あの男は何を仕出かすか解らない実に危険な存在。それは1年前の極神島事件で実証済みだ。 『極神島』の住人は、気性こそ激しかったが、根はいい人達ばかりだった。 『料亭潮風』の面々も然り、『セントジェーン病院』の面々も然り、そして『沙世』も然り。 そんな善人とも言える島民を言葉巧みに操り、悪魔に仕立て上げたのは他でも無い。秋葉秀樹、大地兄弟だった。 自らは決して手を汚さず、汚れた仕事は全て洗脳した者達にやらせる。そして用が済めば虫けらのように始末する。『自分以外は全て使い捨て』それが彼らの常套手段だった。 『富士国』『アマゾネス』『聖経院』 そこに見え隠れする秋葉秀樹の影...... もしかしたら、奴はこの地でまた『極神島』と同じ事を繰り返そうとしているのでは無いか? 十分考えられる話であり、あの男ならやりかねない事だ。手遅れになる前に、何とか負の連鎖を止めなければならない! エマは自分が背負い込んだ重責に、あらためて身の引き締まる思いだ。 そんな神妙な顔付きのエマに対し、珠は実にフランクに話し掛けて来る。 「エマさん。私本当にエマさんと出会えて良かったと思ってる。何の因果で私なんかがこんな危ない仕事するようになったのか未だに不思議だけど、これも何かの縁。 エマさんとここで出会ったのも、きっと神様が巡り合わせてくれたんだと思う。 今じゃ、国の為に命燃やせてる事が私の誇り。誰にでも出来る仕事じゃ無いからね。 将来はエマさんみたいに独立して探偵事務所開くのが夢。私なんかに出来るかな?」 珠は目を輝かせている。まだまだ珠は若い。やりたい事が山程有るのだろう。 「探偵事務所はどうかな......華やかそうに見えるけど、財政的には結構キツいよ。OLやった方がいいんじゃん? それでいい人と結婚して」
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