第十六章 仮面

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道路はそれなりに鋪装されている。その反動なのか、森の中は凹凸が激しく、歩くと言う行為に関しては不便この上も無い。 圭一はステッキで先の地面を叩きながら、一歩一歩慎重に道なき道を進んで行った。 「美緒さん、足元には十分注意してくれ。至る所に罠が仕掛けられているようだ。ほらここも」 圭一はステッキですぐ手前の黒い塊を指した。どうやら動物の死体のようだ。すでに白骨化している。 「これは......」 「恐らく動物じゃ無くて、侵入者を捕まえる為に仕掛けられた罠だろう。足の所に鋭い罠が挟まってる。こんなのに引っ掛かったら痛いぞ」 考えただけでも背筋が冷たくなる。どんなに気持ちは逸っていても、これでは慎重に進まざるを得なかった。 「おっと美緒さん。今度は左にでっかい穴が掘られてるぞ。気を付けて」 穴の深さは凡そ3m程度。上から見下ろすとかなり深く見える。底には鋭利な刃物が何本も上に向かって突き出しており、周りには骨が無数に散乱していた。 動物のものなのか、人間のものなのか...... 判別はつかないが、一体や二体では無さそうだ。 まるでオカルト映画の世界に入り込んでしまったような錯覚に囚われる。不気味この上も無い。 これだけの仕掛けが施されている事を考えても、やはりこの先の『マンタ洞窟』にはそれなりの秘密が隠されているに違い無い。 それが恐ろしくも有り、また期待に胸が高まる二人でもあった。
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