第十六章 仮面

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慎重に歩を進める事30分。 漸く目の前に『マンタ洞窟』の入口が現れた。 それまでの闇の世界とはうって変わり、至る所から照らされる投光器の灯りが、まるで白夜とも言える世界を作り出している。 洞窟の手前では、四方をキョロキョロと見渡す迷彩服の衛兵が2人。何と銃を担いでいるでは無いか。昼間には見られなかった光景だ。 「これは迂闊に近寄れんな」 大木の影から様子を伺う圭一と美緒の二人。表情は固い。 「50mってとこかしら。ここから撃ち殺しちゃうのは簡単だけど、騒ぎになると面倒だしね......」 「なんとか、上手くやり過ごしてあそこを通り抜けたいものだ」 「少し様子を見ましょうか」 「それしか無いな」 逸る気持ちを抑えて、鋭気を養う二人。 こんな所でモタモタしてる間に、ももの身にもしも何かあったら...... そんな事を考えてしまうと、もう居ても立ってもいられない......そんな心境であった事は間違い無い。 かと言って迂闊に動いて捕まりでもしたら、ただの茶番劇で終わってしまう。今は待つ時......そうせざるを得なかった。 じっと大木の影で固まる二人。 真冬の森の中で動かずにいる事は、この上も無く辛い。 完璧とも言える防寒具に身を包んでいる二人ではあったが、顔まで覆っている訳では無い。 自然と流れ出た鼻水が途端に凍る。顔は真っ赤だ。しもやけ寸前と言うところなのだろう。 ............ ............ そして待つ事30分。 やがてチャンスは訪れた。 「よしっ、交代だ。長時間ご苦労さん」 突如、同じ迷彩服を纏った厳つい二人の男が、洞窟の脇からノソノソと歩いて来る。勿論肩には銃を担いでいた。 守護の交代か?
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