第十六章 仮面

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「おお、やっと交代か。立ち番は冷えるぜ」 劇寒の中、ひたすら寒さに耐えていた守護の二人は、交代の到来に安堵。身体の芯まで冷えきっている。 「特に異常は無いか?」 「静かなもんさ。こんな寒い時に、こんな山奥に入り込んで来るバカもおらんよ......さぁ、もう帰ろうや。今日はとっとと風呂入って寝るわ」 そう呟きながら、守護の二人はとぼとぼと『マンタ洞窟』の脇へと姿を消して行った。 「さぁ美緒さん、出発だ」 「了解」 圭一と美緒は満を持して立ち上がると、互いに頷き合う。そして物音を立てぬよう、忍び足で森の中を『マンタ洞窟』の脇へと迂回して行った。 勤めを終えた守護の二人は、必ずどこかの入口から洞窟の中へと入って行くはず...... その時がチャンス!  それを逃したら勝機は無い。二人は心踊らせて守護兵達の背を追って行く。 一方、二人につけられている事など知るよしも無い守護兵達。迷彩服のポケットに手を突っ込み、小走りに先へと進んで行く。吐く息が白い。 おお、寒い...... とっとと帰ろう...... やがて100mも進んだ頃だろうか。樹海の森には凡そ似合わぬコンクリートの壁が斜面に現れ始めてきた。 そしてその真ん中には、いかにも頑強そうな鉄扉が。 守護兵の一人はポケットから、鍵の束を取り出し、取り分け大きな1本を鍵穴に差し込み、そして回した。 カチャ。 それは扉が解錠した音に他ならない。
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