第十六章 仮面

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トントン。 「ちょっともしもし」 誰かが自分の肩を叩いている。 「ん、なに?」 訳も解らず振り向くと、そこには見ず知らずの男女が自分に微笑み掛けているでは無いか。 よくよく見れば、連れの守護兵は横で死んだように眠っている。 「なっ、なんだお前らは?!」 プシュー。ヒュルルルル...... 何やら顔にスプレーみたいな物を噴射されたかと思えば、途端に意識が遠のいていく。 あれれれれ...... バサッ。 守護兵は訳も解らぬまま、意識を失いその場に崩れ落ちた。 「美緒さん。こいつらの服脱がして。さぁ、早く!」 「もしかしてこんな所で私に着替えろとでも言うつもり?」 見れば美緒の目は狐のように吊り上がっている。 「だったらそこの木の裏で着替えればいいだろう。誰も見やしないって!」 「見たら、おしっこ引っ掛けるからね!」 守護兵の服を乱暴に脱がせると、美緒はなおもぶつくさ不平を呟きながら木の裏へと消えて行く。 全く......誰が見るってんだ。 圭一は呆れた表情を浮かべながら、地べたに横たわる守護兵の服を脱がし、迷彩服へと衣替えしていった。 この極寒での着替えは、屈強な圭一とは言えさすがに辛いものがある。 ノワァー......寒い! 熱い温泉にでも入りたい心境だ。 やがて木の裏から、ブカブカの迷彩服を纏った美緒がのっそりと現れた。 どう見ても似合っていない。 「似合って無くて悪かったわね」 「まだ何も言って無いじゃん!」 そんな夫婦喧嘩もどきを楽しむ二人の足元には、パンツ一丁の守護兵が気持ち良さそうに眠っている。 「これ、このままにしてったら確実に死ぬな」 「放っておけばいいんじゃない。別に友達でも無いし」
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