第十六章 仮面

8/27
前へ
/1040ページ
次へ
「確かに友達じゃ無いけどな。でもさすがにこのまま放置は無いだろ」 圭一はそう呟きながら、それまで自分が着ていた防寒具を、眠る守護兵に巻き始めた。 「まあ、なんて優しいのかしら。猿は全滅させたくせに」 一体この人は何を言ってるんだ? トランシーバーで誘き寄せて手榴弾投げたの自分だろ。 もしかして頭おかしいのか? 信じられん...... 美緒も圭一に習い、もう一人の守護兵に防寒具を巻き始めた。 多分最初から放置するつもりなど無かったのだろう。言ってみただけ......そんな感じだ。 やがて足元に二つのミノムシが出来上がる。何も知らずにスヤスヤ......呑気なもんだ。 二人はミノムシを引き摺りながら、大木の裏へと運んで行った。見付かると何かと面倒な事になる。 これで準備は全てOK。 あとは土竜になって洞窟に潜入するのみ!  そんな意気込みが二人の顔を紅潮させてゆく。 「よし、ここからが正念場だ。さあ、覚悟決めようや」 圭一は美緒の顔を見詰めニヤリと笑う。 「こんなの楽勝よ」 美緒もまたニヤリと笑う。  二人はこの後、何の道標も無く、また何の情報も無いまま、敵の心臓部に潜り込んで行く。 その事がいかに危険な事なのか? そしていかに無謀な事なのか? それを知らない二人でも無かった。 生きて『マンタ洞窟』から再び出て来れるのか? そんな事は解りやしない。 課せられたミッションは、生きて戻って来る事だけに留まらず、敵の秘密を暴き、更にはももを救出して来る事。 この二つのミッションを達成出来ない限り『マンタ洞窟』から戻るつもりは無かった。 もしかしたら、互いに笑い合えるのもこれが最後かも知れない...... 二人の笑顔には、そんな深い気持ちが込められていたのも事実だ。
/1040ページ

最初のコメントを投稿しよう!

366人が本棚に入れています
本棚に追加