第十六章 仮面

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ギー。 圭一はゆっくりと重い鉄扉を開ける。中は水を打ったような静けさだ。幸いにも人気は感じられない。 圭一は顔だけを出し、恐る恐る左右の様子を伺う。薄暗い通路が左右に広がっているようだ。 通路の鉄部は所々錆が見受けられ、天井に等間隔に設置された蛍光灯は、かなり旧式のもので、壊れて点灯してしないものも見受けられる。 この通路に真新しさは一切感じられない。つまりそれは、この施設が最近作られたものでは無い事を浮き彫りにしている。少なくとも10年は経過しているであろう。 そんな前から、こんな所で一体何をコソコソやっているのだ......違法行為を積み重ねている事だけは間違い無い。 左か? 右か? どっちを見ても同じ景色。代わり映えは無い。 よし、右! 「美緒さん、こっち」 圭一は通路の右を指差した。正直その判断には何の根拠も無い。ただの勘に過ぎなかった。 圭一、美緒の順に薄暗い廊下を小走りに右へと進んで行く。 タッ、タッ、タッ...... タッ、タッ、タッ...... 意外と長い通路だ。足音が異常な程に先へ先へと響き渡って行く。 「美緒さん、ストップ!」 T字路の手前で、突如圭一が急ブレーキを掛けた。 美緒の鼻が圭一の背中にぶち当たる。 「ちょっと急に止まらないでよ!」 ハナを赤くした美緒が、怒りを露にした。 「黙って。誰か来る!」 そんな美緒を圭一が制した。 コツコツコツ...... コツコツコツ...... 足音が通路の奥から近付いて来るでは無いか。 二人は即座に四方を見渡した。見た所、身を隠す場所などは一切無い。今入って来た扉へ戻るにも、少し距離が有り過ぎる。 「美緒さん。俺達は守護兵に化けてるんだ。何も恐る事は無い。堂々とすれ違ってやろう」 「もしバレたら?」 「その時はその時だ」 「いいんじゃない」 「よし、行こう。自然体でな」 二人はやがて一歩を踏み出した。 薄暗い廊下に静かな三人の足音が響き渡る。 コツコツコツ......  コツコツコツ......  コツコツコツ...... コツコツコツ......  コツコツコツ......  コツコツコツ...... やがてその者の姿が正面に現れた。
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