第十六章 仮面

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すると、白衣男がすかさず切り返す。顔は真っ赤だ。 圭一の言いっぷりがよっぽど気に喰わなかったのだろう。 「そっちの兵隊庁舎のトイレ使えっていつも言ってんだろ!  研究室汚されると研究に差し支えるんだよ。ゴムに混じり物でも入ったらどうすんだ! とっとと兵隊庁舎に戻れ。ほら早く! あっち行けって!」 白衣男はまるで虫でも払うかのように、両手を振って二人を追いやった。 その時二人の視線が釘付けになったもの...... それは白衣男の首にぶら下げられたパスカードだった。恐らく研究室への入室に必要なのだろう。 二人は顔を見合わせ、互いに頷き合う。 そして美緒が吠えた。 「トイレ、トイレって煩いわねー! バカじゃねーの? これでも喰らえ!」 プシュー。  突如美緒はポケットからスプレーを掴み出し、白衣男の顔の前で噴射させた。 すると...... グエッ。 バタンッ! 白衣男は見事に床へと転げ落ちた。 守護兵の時と全く同じ。期待を裏切らないリアクションに二人は思わずほくそ笑む。 「よし、運ぼう」 圭一は白衣男からパスカードをむしり取ると、美緒と共に、男を外へと引き摺り出して行った。 大木の裏にはこれで3体目のミノムシ。二人がこの洞窟を出る頃には、一体とれだけのミノムシが積まれているのだろうか。考えただけでも怖くなる。 「順番から行くと、まずは『研究室』からだな」 「『研究室』って一体何を研究してるのかしら?」 「多分なんかのゴムの研究してんだろ。よく解らんがな。猶予は無い、さぁ行こう!」 「......」 二人は再び一気呵成に洞窟の中へと飛び込んで行った。
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