第十六章 仮面

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タッ、タッ、タッ.....  タッ、タッ、タッ...... 通路を一気に駆け抜けて行く圭一と美緒の二人。担いだ銃のストラップが肩に食い込み、やたらと痛みが走る。 圭一に至っては、更に大柄のリュック。走るだけでもかなりの困難を極めた。自ずと息が上がっていく。 時刻は23時をちょうど過ぎた頃。 夜が明ければ、ここの連中もおのおの活動を始め人が溢れるであろう。森の影に隠したミノムシ達も、いつかは発見される。 時間は決して無限にある訳では無かった。極力時間のロスを減らし、迅速に立ち回る必要がある。 誰かと出くわす事は、とにかく時間のロスだ。極力それは避けたいところだった。 とは言え、出くわしたら出くわしたで......またミノムシを生産するだけの話ではあるが。 扉の内側は極寒の外とは違い、春の陽気が保たれていた。ちょっと走れば自然と汗が滲み出てくる。 漸く二人は先程のT字路まで戻って来た。それにしてもカビ臭い通路だ。鼻にツンとくる。 「左は兵隊庁舎。ももちゃんが居る事はまず無かろう。やっぱ右だな」 圭一は息を切らせながら呟いた。 「研究所に居るとも思えないんだけど......」 美緒は額に浮かぶ汗を拭いながら自論を語った。 「確かにそれは言える......でも兵隊庁舎に行って、いきなりドンパチやるよりはましだろ。 研究所に行けば、そこからまた先が開ける可能性もある。まずは研究所だ」 「そうね。先の事は先に行ってから考えましょう」 「よし......じゃあ行こうか」 タッ、タッ、タッ......  タッ、タッ、タッ......
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