第十六章 仮面

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「何かヒントがあるかもね」 美緒は思いの外落ち着いている。湿気が無くなって機嫌が良くなったのだろうか。美緒が荒れ始めると本当に手が付けられない。 ホッ...... 圭一は胸を撫で下ろした。 ピッ。  タッチパネルにパスカードを当てると、今度もスライド式扉は自動的に開く。 幸いにも周囲に人の気配は無い。研究所もこの時間になると寝静まるのだろうか。水を打ったような静けさだ。招かれざる客の二人にしてみれば、実に好都合と言えた。 正面の壁には、何やら見取図のような物が貼られている。A2サイズのかなり大きなものだ。 「どうやらこの研究所の見取図みたいだな。『資料室』......おお、あった。ここがそうだ」 圭一は『見取図』の一番下側、即ち南側に位置する小部屋を指差した。 確かに『資料室』と書かれている。 よくよく見ると、この『見取図』には小さな部屋が幾つも散見し、それらはまるで迷路のように入り乱れていた。 今二人が居る『資料室』の実際の大きさと、この壁に貼られた『見取図』を照らし合わせてみると、この研究所の敷地はとてつも無く広い。これら全てが洞窟の中である事に驚きを隠せない。 事務室、管理室、医務室、仮眠室、閲覧室、第一研究室、第二研究室、第三研究室、合成工場、組立工場、実験室、ビレッジ...... 「ビレッジ?」 「何それ?」 二人は首を傾げる。 「ビレッジか......単直に言うと『村』って事だろ」 「研究所の中に『村』があるって事?......『見取図』を見る限りかなり広いわ......何だか臭うわね」  「......」 「......」 「まずはそこか......」 圭一はニヤリと笑い、美緒の目を見詰める。 「行くしか無さそうね」 美緒も薄ら笑み。圭一の目を見詰めた。 樹海の中に潜む『マンタ洞窟』 マンタ洞窟の中に君臨する『研究所』 研究所の中心に位置する『ビレッジ』 そしてそこは『富士国』の中心でもあった。 今圭一と美緒の二人は、正に『富士国』の中心に向かおうとしていた。
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